出版業界、最盛期の65%の水準に落ち込む……出口の見えない不況に処方箋はあるのか

2013年の書籍と雑誌の総売上額が約1.7兆円であることが出版ニュース社の調べでわかった、と朝日新聞が報じている。

9年連続の市場縮小で、最盛期(1996年)の65%の水準だという。

ざっくりと記事の内容をまとめると、

 

・年間4000万部を誇った新潮文庫もいまでは半分の2000万部に

・人気作家の初版部数でも3000部程度に

・全国の書店が減り続け、昨年(2013年)は298減って、334の自治体には新刊書店がない

・出版社(版元)も88社減って3588社。ピーク時から2割減った

出版不況の最大の原因は雑誌の不調

・電子書籍もふるわず、業界大再編時代に突入との声も

 

当サイトでも再三にわたって業界の事情は取り上げてきたけれど、すでに旗幟鮮明となっている市場の退潮傾向に歯止めはまったくかかっていないことがはっきりとした。

また、再三にわたって僕が書いてきたことの裏付けともなるデータが、改めて出そろった。

 

いまや書籍の返品率よりも雑誌の返品率が上回り、それも40%前後と非情に厳しい状況だ。

大手出版社の某女性誌の副編集長は「うちで黒字の女性誌なんて1誌だけ。あとはすべて真っ赤っか(大赤字)」と打ち明けてくれた。

『出版大崩壊』(文春新書)の著者である山田順氏も、「(出版業界は)とっくに終ってる」と何回かお会いした際に語っている。

 

その「終っている現実」が、具体的に何を指すのかといえば、要は出版というビジネスモデルの崩壊、これに尽きる。

設備投資が必要なく、人的投資が一番の投資と言われ続けた出版業界。

その人的投資の高さが、業界疲弊の原因の一つでもある。

残業青天井の時代には、20代で年収1000万越えの編集者(これは大手の一部の水準だけれど)が当たり前。

ある大手では社員平均収入が1200万だったところを、800万台にまで落とす施策をとり、大規模なリストラで乗り切った(「りすとらなう」というブログで当時の業界でセンセーショナルな話題を呼んだ。大手版元の社員が、いわば、リストラの実況中継を毎日更新していたのだ)。

またある大手では本業の赤字を不動産などほかの事業収入で担保して黒字計上。

KADOKAWAとドワンゴの統合について書いた時にも指摘したけれど、もはやネットとの融合以外に、生き残る戦略はない。

 

活字離れが深刻とはいっても、本や雑誌を買ってまで読まなくなっているだけで、スマホやパソコンで、むしろネットで情報をとる人は増えこそすれ、減ってはいない。

 

つまり、ネットをバカにした完全な戦略ミスが原因である。

 

二大取次(トーハンとニッパン)の流通を中心とした出版の既存システム(企画編集から製本・印刷、書店やコンビニへの流通、売れ残りは返品)が、いまだ機能しているというのは、崩壊に向けて機能しているに過ぎないと僕は断じたい。

他の業界のように、海外との価格競争やクオリティ競争にさらされず、日本という池の中で小さなパイを奪い合う構造そのものが劣化しているのだ。

 

それでもやれることはある、と僕にも考えている事があるけれど、再編は不可避だろう。

 

税負担の問題などを考えると、パソコン一台で仕事ができる作家も、特殊な事情がない限り、海外へ移住したほうがいいくらいだ。

どこにいても仕事ができる、どこからでも紙の本も電子版も入手できる時代なのだ。

だからAmazonや楽天は、我が世の春を謳歌しているとは言えまいか。

 

根本的な問題は、あまりにも古めかしい流通と、コストにある。

受給ギャップは、紙であるゆえに起こっている。

 

新たなシステム構築とコスト管理にこそ血道をあげるべきなのに、そこを怠り、あぐらをかいて上から目線で時代を眺めてきたツケがいま、きている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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