池上無双、健在! 「持論を述べない」ジャーナリスト・池上彰の「持論」
もう何年も前、編集者仲間と雑談していたときの話。
a「池上彰ってなんでこんなに売れてんだろうな」
b「NHKの週刊こどもニュースのキャスターだもんな、まさかだよね」
c「いや、実は目つけてたんだ、俺。NHK辞めたら絶対ブレイクするってさ」
a「こどもニュースね、たしかにあの番組、こどもじゃなくて親に、とくに母親に人気あるって話は聞いた」
c「だからさ、テレビで言うところのF1層(20〜34歳の女性)に響いたら、当たるんだって」
b「民放でて正解だよな。NHK出身でいったら、たぶんダントツで売れてる人だよ。ほかにもいろいろいるけど、こんだけNHK的な雰囲気で、NHK的じゃないおっさん、いなかったよな。頭だけ、妙に気になるんだけど(笑)」
特徴的なヘアスタイルの話はともかく、この時に話題になったのは池上さんのNHK時代の経歴だ。
実は池上さんは、記者としてはあまり力を発揮してなくて、「週刊こどもニュース」のキャスターも、誰もやりたがらない中で、自ら手を挙げたというのだ。
不思議なもので、これがこども向けの番組であるにもかかわらず、「本当にわかりやすい」とお父さんやお母さんたちにも人気が出て、今にして思えば、この段階でF1層を鷲掴みにしていたことになる。
ググってみると、社会部記者を経て、『ニュースセンター845』、『イブニングネットワーク』のキャスターを担当後、1994年から退職する2005年まで『週刊こどもニュース』で、ニュースに詳しい「お父さん」役として編集長兼キャスター。2005年3月、定年前でNHKを退職しフリーランスのジャーナリストに転進。
退職後、2005年8月6日放送の日本テレビ『世界一受けたい授業』で民放初出演。
以降の活躍はご存知の通りだ。
テレビ、出版も絶好調。本は、出せば売れる。テレビは、出演すれば数字が出る。
一方で、テレビ東京の選挙特番のメインキャスターをつとめ、タブーとされる問題にも果敢に突っ込んで行く、世におもねない硬派ぶりも見せて、人気だけでなく、「難しくてわかりにくいことを、いかにわかりやすく解説するか」という姿勢への信頼や信用も厚みを増したようだ。
「自分の意見を述べない」理由
そんな池上さんが、CS「テレ朝チャンネル2」の報道番組『津田大介 日本にプラス』の収録後に行われたオリコンの取材で、「持論を述べない持論」を述べていて面白い。
以下引用する。
池上氏は「NHKの報道は客観的に公正、公平、中立でなければならないと叩きこまれてきました。自分の意見は述べてはいけなかったんですね。NHKでずっとやってきたことが、民放テレビ局でビジネスとして成り立ったということですよね」とあえてブラックな言い方をする。
「いざ、フリーランスになる決意をしたら、どうやって食っていくかという問題もありますし、人と同じことをやっていても生き残れない。人と違う自分の強みは何かを考えた時に、『自分の意見を言わない』というニッチな需要を見つけたんです」。
池上氏にとって転機は2つ。一つは、平成元年(1989年)にニュース番組のキャスターに抜てきされたことが大きかったという。「それまでは記者として特ダネをつかむことばかり考えていたんですが、ほかの記者が書いたニュース原稿を読む立場になって、なんてわかりにくいんだろうと思った。ニュースをわかりやすく伝えることの大切さを痛感したんです」。
もう一つは、やはり『週刊こどもニュース』。ここで、ストレートニュースと一緒にその経緯や背景を解説する“池上スタイル”が確立された。
「以前、台湾の総統選挙をめぐって、中国が嫌がらせで軍事演習をしたことがあったのですが、このニュースを『週刊こどもニュース』で扱った時、なんで中国と台湾は仲が悪いんですか? と聞かれたんです。えー、それを知らないのか、そうだったのかと(笑)。多くの人が学校で現代史というものを学んでいない。そこで、また見つけてしまったんです。現代史というニッチなニーズを」とニヤリ。
池上無双、恐るべし。
あんなに人の良さそうな顔をして、実に戦略的なジャーナリスト。
オリコン記事からもう一カ所引用して本稿を閉じたい。
この日の池上氏は、ナイロン素材のオーソドックスなビジネスバッグのほかに、資料が詰まった紙袋を2つ持ち、一方の紙袋からは世界地図がはみ出ていた。多忙な日々を送る池上氏の健康維持の秘けつは「ストレスを溜めないこと。嫌な仕事は受けない」と番組関係者もいる前で即答する無双ぶり。「楽しんでできる仕事だけ受けています」とピリ辛な物言いで場を和ませる達人でもあった。
ちょっと偉くなり、知名度があがると、人任せでおいしいところだけをもっていこうとする人が多い中で、ちょっとぐれた、不良中年っぽいところも見せる池上さん。
お見それいたしました。
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