KADOKAWA+ドワンゴ、経営統合で見える出版不況の深刻さ

やっぱりな…

5月14日、角川書店で知られるKADOKAWAとニコニコ動画(ニコ動)のドワンゴが経営統合のニュースを知って、真っ先に思ったのは「やっぱりな」だった。

 

もともとすでに業務提携を始めていたし、角川は相次いで中小出版社を買収・合併。下記に名前はないが、歴史関連雑誌、ムック、書籍などを発行していた新人物往来社は、中経出版が吸収する形で消滅。近年に買収した出版社は、9社にも上る。

 

2013年10月1日のKADOKAWのホームページによると、

「2013年10月1日、株式会社KADOKAWAは新たな体制となり、比類なきメガコンテンツ・パブリッシャー、およびデジタルコンテンツ・プラットフォーマー」になるとし、「アスキー・メディアワークス、エンターブレイン、角川学芸出版、角川書店、角川マガジンズ、中経出版、富士見書房、メディアファクト リーは、合併後も新しい組織概念『ブランドカンパニー』」化した。

 

【KADOKAWA ブランドカンパニー一覧】

 

面白いのは、2社の比較で見ると、売上高はKADOKAWAがドワンゴの約4倍あるのに対し、株式の時価総額はドワンゴがKADOKAWAを100億円ほど上回るという(朝日新聞5月15日付)ことだ。

 

統合会社のKADOKAWA・DWANGOの人事にも、その辺りの影響が透けて見える。

 

メガ・コンテンツ企業しか生き残れない?

それにしてもえらいことになってきた。

 

コンテンツ産業の未来は、もはや動画なくして成り立たない。

 

初音ミクのボーカロイドで世界を席巻したニコ動は、いまや若者たちにテレビと同様、あるいはそれ以上の価値をもたらしている。

 

ニコ動やYouTubeに代表される動画コンテンツの会員数を見れば一目瞭然だ。

・ニコ動の会員数  国内外で3900万人(2014年5月現在)

・YouTubeの会員数 国内外で10億人(2014年3月現在)

 

ちなみに破竹の勢いのLINEは2014年4月に世界で、ユーザー数4億人を超えたと発表。

 

アップルやグーグルに席巻されて来た、メガコンテンツ業界への、殴り込み!? かと思いきや、個人的な想像になるけれど、要するに生き残るために避けられない選択、ということだと思う。

 

新聞・出版・テレビ映画、アニメなどのコンテンツ事業が、動画視聴サービスが接近するのは、当たり前と言えば当たり前で、企業風土とか企業文化の違いはあっても、遅かれ早かれくっつかざるを得ないと、僕は4年前から主張して来た。おそらく一気に、出版メディアの再編が始まる契機になる、ならざるを得ない状況に追い込まれるだろう。

KADOKAWAとドワンゴの現状

朝日新聞によれば、ニコ動で20代を中心に熱い支持のあるドワンゴも、売上高はここ数年350億円で横ばいが続いていた。

 

KADOKAWAは、全体で1500億の売上高があるけれど、伸び悩んでいるという。

 

調べてみると、KADOKAWAの平成24年度決算では、営業利益は56億5500万円(前年比27.4%減)、経常利益は59億500万円(同31.1%減)、当期純利益は36億400万円(同43.4%減)。

 

平成26年度決算を見ると、営業利益は45億6000万(前年比17.3%減)、経常利益は55億5000万(前年比10.5%減)、当期純利益73億6400万(前期比145.4%)。

 

出版事業での売上げが全体の6割程度と考えると、出版大手で買収を重ねて大きくなって、それでもなおかつ本業での儲けは沈み続けているということだ。本業は前期比で落ち込みが続く中で、25年度決算の当期純利益を見ると約30億。それが1年で1.5倍になった理由。

 

営業利益ベースで見た場合の、売り上げに対する利益率も、単純計算でわずか3%。

 

100円かけて3円しか儲からない商売、単純化しすぎてもいけないけれど、それほどまでに出版は食えない世界ということになる。

 

つまり、両者の統合は、生き残るための必然の統合なのだ。

出版不況があまりにも酷すぎる件

角川については、ほかに面白い話もあるので、次回にまわすとして、改めで数字で見る出版業界の現状を検証しておく。

かつての出版業界は売上げ規模で2兆6000億の規模があった(90年代半ば)。

それがいまは、2013年のデータで1兆6900億。

リストラや給与カットなんて当たり前、というこっちゃ、この数字は。

なぜこんなにも市場が縮小しているのか。

これも僕なりの分析があるので、それはまた後日。

本業でがっつり黒字出してる出版社なんて数えるほどしかない。

きょうはこのことを結論にしておく。

書いてて、ため息がでてくるわ。本当に。

 

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