恋愛に生き抜いた直木賞作家・渡辺淳一が残したもの

直木賞作家、渡辺淳一さんが4月30日亡くなった。死因は前立腺がん。80歳だった。

渡辺淳一と聞いて、たいがいの人たちはダブル不倫を描いた『失楽園』を思い出すと思う。

映画では黒木瞳と役所広司、ドラマでは川島なお美と古谷一行が主演で、本もさることながら映画とドラマも大きな話題に。

渡辺氏死去の報を受けて、黒木瞳と川島なお美が、哀悼のコメントを出したが、まさに最愛の人を亡くしたかのような悲しみを綴ったその内容は、下記の話を裏付けるものと言えるかも。

 

「日刊サイゾー」が紹介したある出版関係者の話。

↓    ↓    ↓

「渡辺氏の代表作『失楽園』のヒロインを務めた2人だが、双方とも渡辺氏と“大人の関係”であったことは公然の秘密。とはいえ、黒木は当時結婚していたので、かなり割り切った関係で見事にヒロインの座をゲット。一方、川島は独身だったので、どっぷりと渡辺氏との関係にハマり、たびたび“不倫密会”の現場が報じられた。渡辺氏も川島に対するケアは手厚く、関係を解消した後には昵懇の編集者に『なお美を頼む!』と“愛人関係”の引き継ぎを託したほどだったとか。それだけに、川島のショックの大きさがうかがい知れる」

 

僕が版元にいたころも、この手の話はよく話題に上ったものだ。自分の実体験しか書かない、とご本人が言われた話は、昔から知れ渡っていて、

 

「ご老体でよくそんな体力があるよなー」

 

などと宴席で上司がうらやましげに、嫉妬丸出しで語る姿に、よく笑ったものだ。

 

まさに自分の書かれた小説の通りに生きた作家。

 

『うたかた』『愛の流刑地』など、誰もが知るベストセラーに事欠かない渡辺氏だけれど、一方で、『鈍感力』『熟年革命』など、時代のうねりや流れをとらえる抜群のセンスでエッセイなども手がけ、多彩かつ多産な作家だった。

 

ただのエロ作家、なんて言う人もいるけれど、いまみたいにオネエ系全盛の中性的なキャラが受けて、男と女の関係も淡白で希薄感ただよう現代をどう見ていたのか、聞いてみたかった。

 

繊細な男女の心のひだに分け入っていく文章で、オスとメスという深い視座をもった知的なおっさん。

 

銀座のクラブあたりでも、つねに話題の中心になっていたおっさんなんて、そうそういない。

 

「男と女を書かせたら右に出る者はいない」と言われた、故・吉行淳之介のことも、渡辺さんの死で思い出した(吉行氏は、群像新人文学賞で、村上春樹を見いだした作家としても知られている)。

興味のある方は、ググってみてください。

 

やっぱ、男と女って永遠のテーマなんだな〜。

 

蛇足だけれど、僕にも思い出があって、渡辺淳一という作家を知ったのは『白夜』という小説が初めて。

 

もう20年以上も前だったろうか。いやもっと前か。

 

若き医者の精神の彷徨を描いた作品で、渡辺氏はもともと札幌医科大学出身で、医学博士。医師の傍ら小説も書いていた。僕も医者を目指していた時期があって(いまとなっては、なんで? ってな感じです)、このころの作品が、個人的には一番印象に残っている。

 

和田心臓移植事件(日本発の心臓移植をめぐる事件。日本の脳死判定と移植手術を遅らせたメルクマール的な医療事件)を告発した小説『白い宴』(『小説心臓移植』として発表、その後改題)も、渡辺氏の作家としての矜持がもたらした作品だった。

 

有名無名を問わず、さまざまな女性を虜にしてきたってことだけみても、しかもその体験を小説に昇華させていくというその類稀なる才能にも、脱帽するほかない。

 

老いたる恋愛小説家の最期。葬儀は家族と近親者のみで行われたという。

 

黙祷を捧げたい。

(渡辺淳一作品一覧)http://www.amazon.co.jp/渡辺-淳一/e/B001I7AR84/ref=ntt_athr_dp_pel_1

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