「新社会人は、紙の新聞を毎朝読むべき」って、どう思う?

ライフネット生命社長・岩瀬大輔さんのブログ(現在は修正済のブログとお詫びが掲載)が波紋を呼んだ。

波紋を呼んだ記事そのものはすでに削除されている。

4月1日がエイプリルフールということで、逆説めいた新入社員向けのメッセージを書いたわけだが、ツイッターやコメントで炎上。

社会人となったからには始業30分前に来て新聞を読む。
だけどネット時代の今、それって意味あるの? 

的な内容で、岩瀬さんの真意は、実はその逆なのだが、現在の修正されたブログに詳細が掲載されているので、興味のある方はチェックしてみてください。

それはそうと、4月4日付朝日新聞の朝刊23面に、「春の新聞週間」ということについてコラムが3本。

中でも、東宝で『モテキ』『悪人』などのヒット作を製作、初小説の『世界から猫が消えたなら』が大ベストセラーとなった川村元気さんの記事が目を引いた。

写真

(朝日新聞4月4日付より)

川村さんは毎朝の通勤電車で、あえて携帯を見ずに新聞を読む事が日課だと(おじさんからするとあまりに当然なんだけれど…)。

「人間の業とか、こんなことするんだとか、ネットならクリック数が伸びないような記事を読むんです」と。
こうした記事にこそ新聞社による「取材の意義がある」というのが持論だと語る。

さすが。クリエイターはこうでなくちゃ。
と思って続きを読むと、
なぜ若者が新聞を読まなくなっているのか、どうすれば読んでもらえるのか、その答えは見いだせていない、と続く。

突然、新聞社の内部の人間のような台詞が…。
あれれ。

「新聞は若者に読まれていないという絶望と向き合う時期なんだと思います。絶望なくして勝利の道筋は見えないと、僕は映画から教わりました」

これがこの記事の結論。
記者による談話の記事化です(読める方は読んでみてください)。

僕はこれだから、実は新聞が嫌いなんだな。

談話記事って、電話ですますこともあるし、もちろん会ってそれなりに時間かけて話を聞いて、決められた字数の中でまとめるものだ。

でも、これじゃ、新聞の新聞による新聞のためのような記事になってしまう。
川村さんはきっともっといっぱいしゃべったはずだし、真意を本当に伝えているかどうかはかなり怪しい、と思う。というか、もっときちんとした記事にするべきだったと思う。

なんか朝日の宣伝広告みたいに見えたのは僕だけだろうか。

なんか、すごく表面的な「いい人」感がでてるみたいで、僕の個人的な感想では釈然としない。

常にとは言わないけれど、新聞はよくウソをつく。
雑誌も出版物もそうだけれど、間違いがあっても、本当に小さな謝罪文を、目立たないようにすみっこにちょこんとおいてあるだけだ。

もちろん川村さんの記事で謝罪云々は関係ない、と思う。

記者クラブの問題とか、体制からの垂れ流し情報とか、新聞を巡るいろんな問題を完全に無視して、ただ新聞は読まれるべきものだ、いや読むべきものだ、とかいう話は、論点がずれるのでここでは書かない。

クリック数の話はともかく、新聞も本も雑誌も買ってもらってなんぼの世界。
とくに新聞や出版社は、一部をのぞいて、ネット世界を仮想敵のような扱いにして、指をくわえて眺めていた時期が長過ぎたのだ。
だからネットにエンドユーザーを奪われて、青息吐息なのだ。
いわば自業自得。自縄自縛に自ら陥った。

僕も出版業界の端くれにいた人間だから、その辺の事情には詳しい。

アメリカで紙の新聞がことごとくダメになっている背景。
一方でニューヨークタイムズは紙を辞めて有料の電子判で黒字化という事実。

日本の新聞だって、全国紙はほとんど紙面を電子化して読めるようになっているし、紙の新聞そのものの必要性は、かぎりなく低くなっている。川村さんの言う「生理的な感覚でレイアウトされた紙面」は、すでに電子判でも読める時代だ(業界内ではあちこちでリストラが進んでいる。それこそ身内ネタはあまり記事化されないけれど…。そのくらい生き残りが大変な状況に追い込まれているのだ)。

ネットスキル格差のある人のために、紙媒体は必要だし、国民の知る権利を奪うべきではないという意味でも紙媒体はまだ必要だ、とは思う。

ただ、朝、新聞を読んでいるから偉いとか、いうのは時代遅れもはなはだしい。

若者をなめすぎだと思う。

情報の取り方が、かつてとはもう根っこからして違うのだ。

多くの人は、ネットでほとんどのニュースに触れる事ができる。
分析記事にも事欠かない。

この時期、つまり新社会人が誕生する4月には決まってこういう記事の類が出るのだが、紙をどうこうという議論はさておき、情報の流通そのものが問われる時代になっている。

そういう僕も、数年前、川村さんの言う「生理的なレイアウト紙面」と新聞広告から世の中がけっこう見えてくるし、新聞は読んだほうがいいよ、と、新入社員の研修担当で言ったことがある。

ところがこの数年でも、状況は激変した。
タブレット端末が当たり前になり、スマホも爆速的に進化し、その分、あらゆるビジネスモデルでコモデティ化が進む…。

最後の最後に話がずれた。

結局、高給取りの社員のために、消費者が支払う新聞への対価の正当性を、一度徹底的に業界内外で議論すべきと思うだけどなあ……。

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